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5「変わらない地色」
患者: 訪問着
保護者:40代営業職
症状:出入りの呉服屋さんから吹雪加工というものを教えてもらいました。手持ちの着物に吹雪のような細かい斑点を好きな色でいれてあげると言われました。丁度着なくなったピンク色の訪問着があったので、濃紺の吹雪を入れたらピンクと混ざって紫っぽくなるだろうと思って加工をお願いしましたが、出来上がりを見てみると想像と全然違って余計きつい感じになりました。どうすればよかったのでしょうか。
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一口に吹雪と言っても主に三種類の加工方があり、それぞれ出来上がりの感じは全然違います。
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樹脂吹雪:エアガンで霧状の顔料を吹き付けます。下図左の感じです。柄をマスキングすれば柄の際までいれることができますし、マスキングせずにぼかすこともできます。粒の大きさはあまり自由になりません。霧状の顔料ですから、あまり大きくするとにじんだようになって見苦しくなります。
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捺染吹雪:これも下図左の雰囲気で型染めと思ってもらえれば結構です。吹雪の大きさや形は思うような型があれば自由になりますが、輪郭がはっきりしているために、むっくりした味わいに欠けます。基本的にぼかすことはできません。本件はこの加工でした。1、2共に地色は染まることなく、あくまでも元の地色のなかに吹雪が入るわけですから、色の印象はあまり大きくかわりません。
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ロウケツ吹雪:まず全体に溶かした鑞を霧状にして吹き付けます。刷毛で地色を染め最後に鑞を落とします。すると新たに染めた色が地色になり、鑞の乗った部分が染まらないために、もとの地色が吹雪の色として残ります。ですから下図右の上がりになります。粒の大きさや詰め具合にそこそこ自由がききます。輪郭が程よくぼやけるのでむっくりした味わいがあります。本件の場合はこの染め方にするべきでした。
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A.の吹雪は地色の印象があまり変わらないので、イメージを変えずに汚れや生地難を隠すのに向きます。地色を地味にしようとして失敗する例をよく見ます。
B.の吹雪はイメージを変えることができるので、イメージを変えたいときに向きます。吹雪なしではシミや際付きの出る恐れのあるときによく使われます。
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加工法 |
地色 |
ぼかし |
微調整 |
特長 |
樹脂吹雪 |
不変 |
可 |
可 |
濃い地に薄色でも乗る
裾だけ等、平に置ける部分だけなら仕立てたまま加工可 |
捺染吹雪 |
不変 |
不可*1 |
不可 |
型を使うので、個性的なものを選択できる |
抜色吹雪 |
不変 |
不可 |
不可 |
濃い地に吹雪を入れる |
吹雪入りシゴキ |
変わる |
不可 |
不可 |
吹雪と地色を一度に染められる |
ロウ吹雪引染 |
変わる |
可 |
可 |
高級感があり、ぼかしに向く |
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*1 柄の周囲まで大きく伏せておいて吹雪をいれ、後に柄のまわりだけ手描きで吹雪を描いていく方法でぼかしにする業者がある。 |
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