休み中でしたので、お返事遅くなりました。すいません。 薄い藤色が濃いグレーとは、まずそこが具合悪いですねえ。 着姿の写真などを色見本としてお使いになったのではないでしょうか。 胸と裾とで随分濃淡の差があったりしますので、色見本として使うには不適切です。 そうでなければ、単に職人の技術不足です。
さて、 ハリについてはその通り。 「張り」と呼ばれる加工があって、大島や胴裏などハリ感を求められる素材に用います。 もっとも張り仕上げをせずに納品したことに関しては、どうかと思いますが、 譲られた着物は仕立て上がりでしたか、反物でしたか。 反物だと、仕立て前に「地入れ」あるいは「湯通し」という工程が必要なのはご存知だと思います。 反物の状態で含んでいる糊気を落としますので、ゴワゴワした感じがなくなってしなやかになります。
地模様にかんしては、地色がグレーになったので、相対的に白地の印象と比べてぼやけたのだと思います。 絣の色が染色の工程で薄くなるとは思えません。
色抜きすれば地色は藤色に染め直すことができますが、絣がどうなるかわかりません。 地色と一緒に抜けてしまったら台無しです。 絣は残して地色だけ脱色というのは、私も経験がありません。 絣は物によって、家庭用漂白剤などでも動きませんから、 (私は自分の麻は漂白剤を使って自分で手洗いしています) 適切に材料選びをすれば、或は可能なのかも知れませんが、 業者にしてみれば、ほとんどは真っ白に脱色することを求められているはずなので、 一反だけ特別扱いをしてくれるものなのか、私にはわかりません。 もしお相手の業者さんが、絣を残して脱色できると仰っているのであれば、理屈としては不可能ではないと思います。
また、大島は非常にスレ(摩擦による表面の毛羽立ち)に弱いので、染色も脱色も、普通の縮緬とは別の扱いが必要です。 スレが出ると毛羽立ちによる乱反射で白っぽく見えます。 その理屈がわからない人は、「染めムラになってる」とか「色がハゲている」と表現しますが、それぐらいはっきりとわかります。 十分な注意が必要なことは、業者も心得ているでしょうが、ある程度のリスクはついてきますので、 なるべくなら、そのままお召しになるか、あるいは、脱色せずに別の濃い色を検討なさったほうが懸命です。 濃いグレーからなら、藍染めのような紺や泥大島のような焦げ茶はどうでしょうか。 いずれにしても、今よりさらに濃い色になるので、亀甲模様はさらにぼやけたようになってしまいます。
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